就業規則を作成するときは
就業規則を作成するときは

 

下記のような就業規則の規定や取扱いは要注意です。

 

 

◆そもそも会社に就業規則がない。

 

就業規則を作ると、それに縛られるから作らない、という経営者の方がいます。
あるいは、会社の創業時には就業規則を作っていなくて、その後規模が拡大しても作らないままという会社もあります。


就業規則は、会社と従業員との約束事を文書にしたものです。いざトラブルが発生したり裁判になった場合は、まず就業規則にどのように規定されているかが問われます。

 

従業員を雇えば、さまざまな問題が起こります。会社が発展して、従業員数が増えればなおさらです。

 

うつ病で出社したり休んだりを繰り返す、飲酒運転で人身事故を起こした、大学中退が大卒と学歴を偽って入社した、部下にパワハラ・セクハラをした、社員同士でケンカをした、経理担当者が横領した‥‥

 

これらの問題の対処法をルール化して、従業員に周知しておくことが大事です。

 

行き当たりばったりの対応をすると、Aさんのときは口頭注意だけだったのに、自分が同じことをしたら始末書を書かされたなどと、従業員の間に不公平感が広がって労働意欲に影響します。

 

ルールが明確になっていれば、従業員も安心して働けますし、無用なトラブルを防げます。

 

労働基準法では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作って行政官庁(労働基準監督署)へ届け出なければならない」と決められていますが、たとえ10人未満の会社でも、就業規則を作ることをお勧めします。

 

 

 

◆無料で使える就業規則のひな形を利用して作った。

 

手っ取り早く就業規則を作りたいと、ネット上で無料ダウンロードできるひな形を利用して、労働時間など必要な部分に自社の規定を当てはめて作っている会社もあります。

 

ひな形を利用する場合は、ひな形の文言の隅から隅まで必ず目を通してください。

 

そして、意味の分からない言葉や規定があれば、労働基準監督署の相談窓口や社労士などの専門家に確認してください。意味の分からないまま利用してはいけません。

 

 ひな形の文言は、いろいろな会社(業種)に対応できるよう汎用性を持たせていますので、あまり具体的ではなく抽象的な表現になっている規定もあります。

 

抽象的な部分を自社の実情に合わせて具体化せず、そのまま流用してしまうと、あいまいな規定になってしまい、会社の負担が増したりトラブルを防げなかったりということも起こります。例として、下記のようなことが考えられます。

 

「賞与は年2回、○月と△月に在籍する従業員に対し、会社の業績等を勘案して○月△日と○月△日に支給する」

 


「支給する」と決めてしまえば、業績が赤字でも払わざるを得なくなります。業績の低下等により、支給を延期したり支給しない場合があることを明記しましょう。

 

 

 「在職中および退職後において、会社、取引先等の機密を漏らしてはならない」

 


機密とは何か、曖昧なままにして漏えい禁止にしても会社を守れません。

 

「顧客情報」「企画案」「業務のノウハウ」など、なにが機密情報にあたるのか具体的に明記し、入社時に機密を守るという誓約書を書かせ、退職者に対しても機密を守るよう念書を書かせるなどの対策が必要です。

 

 

 

 「退職は、退職予定日の14日前までに申し出なければならない」

14日前では、有給休暇を消化するために出勤せず、しっかり引き継ぎをしないままにやめていく人も出てきますので、せめて1か月前までに申し出とすべきです。

 

引き継ぎを完了せずに業務に支障をきたした場合は、懲戒処分もあり得ることを明記しましょう。

 

 

「昇給は、毎年○月○日をもって、基本給の部分について行なう。ただし、会社の業績の著しい低下、その他やむを得ない事由があるときはこの限りではない」


昇給の規定だけで、降給の規定がない場合があります。将来、業績悪化により降給や整理解雇などの可能性があるなら、降給もありということを明記しておきましょう。

 

 

 「休職期間中に休職事由が消滅した時は、もとの職務に復帰させる」


休職事由が消滅したかどうかの判断を、会社がするのか従業員本人がするのか明記していないと、本人が自分の判断でもう大丈夫だからと出社してくることが考えられます。

 

休職事由が消滅したか否かの判断は、あくまでも会社が行なうものだと明記しましょう。判断材料とするため、会社が指定する医師(病院)の診断書の提出を義務付けるなどの規定が必要です。

 

 

 ◆もう何年も内容の見直しをしていない。

 

作った当時のままで、定年が58歳などと化石のような? 規定が残ったままになっている場合があります。それほど極端でなくても、毎年のように改正されている法令に適合していない規則が多々あります。

 

また、在宅勤務、兼業・副業、メンタルヘルス不調(うつ病など)、パワハラ・セクハラ、情報漏えい、業務に関係のないことでネットサーフィンする従業員への対応など、時流に適応する内容になっていない就業規則もあります。
できれば、専門家による見直しをお勧めします。

 

 

 

◆従業員に周知していない。

 

従業員に就業規則を見せると、権利を主張されてめんどうだと、作ったきりでロッカーなどへ入れておき、従業員に周知していない経営者の方もいます。周知していなければ、作っていないのと同じことになってしまいます(効力がない)。

 

労働基準法では、「労働者に周知させなければならない」と義務付けています。
例えば、懲戒規定などをいろいろ並べておいても、周知していなければ、      いざというときその規定を基に処分することができません。 

 

周知の方法は
・入社時に説明する。
・コピーや製本して全員に配る。
・会社の掲示板にぶら下げておいて、いつでも見られる状態にする。
・社内のローカルネットワークで、いつでも見られる状態にする(パソコンを支給されていない人にはコピーを渡すなどの配慮が必要)。
など、いろいろ考えられます。

 

従業員に「どこにあるのか知らない」「見たこともない」などと言われないようにしましょう。

 

 

 ◆正社員だけに適用されるのか、パートやアルバイトの従業員にも適用されるのか明記していない。

 

昇給、賞与、退職金などの規定が、正社員だけに適用されるのか、パート・アルバイトにも適用されるのか、明記していない場合があります。
明記していなければ、パート・アルバイトから昇給、賞与、退職金を出すよう要求されることが考えられます。

 

それでは困るなら、パート・アルバイトには適用しないと明記するか、パート・アルバイト用の別規則を作っておきましょう。

 

なお、正社員とパート・アルバイトはどう違うのか、という定義も大切ですからしっかり決めておきましょう。

 

  

 

 ◆服務規律と、それに反した場合どんな懲戒処分ができるのか細かく決めていない。

 

問題社員を懲戒処分にしたいと思っても、どんな場合に懲戒処分できるのか、細かく決めておかなければ処分できません。

 

とくに懲戒解雇のような重い処分の場合はなおさらです。

 

服務規律と、それに反した場合の懲戒処分を連動させて決めておく必要があります。

 

 

 

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